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帝都の風景




 第1回『帝都コンスタンティノヴァール』


 帝都コンスタンティノヴァール。
 ヨーロッパとアジアの、二つの世界にまたがる大帝国、アイマール帝国の首都に
して、17世紀には世界最大の都市でありました大都市、コンスタンティノヴァール。
 今回は、「奴隷物語」の舞台となりますこの都の一端を、妄想の旅人こと小生が
いつものそぞろ歩きがごとき乱文にて失礼をしながら、ご紹介させていただきます。

 この都市は――
 地図で見ていただくと、東欧とアナトリアの中間、黒海とエーゲ海、マルマラ海に
またがる形の地形の、海峡を挟んでその両端にある変わった形の都市です。
 この場所には、紀元前から人々が住み、都市と城壁を築き――それを幾重にも、何
世代も重ねて来ました。そして紀元前七世紀、ギリシア人たちがいまの王宮のある場
所に都市を造り、その後はローマ人がこの地を都市として――ローマ帝国分裂後は、
そして西ローマ崩壊後は、この都コンスタンティノポリスはローマの首都として、そ
してローマの末裔であるヨーロッパ人たちにとって、重要な都となりました。
 ここコンスタンティノポリスは、ローマ人にとって、第二のローマとなるべき土地
でした。ここには、ローマと同じく七つの丘があり――そして後には、ローマ建国の
伝説にあわせて、ローマの創設者ロムスとレムスと同じ二人の英雄が、七賢帝と同じ
七将軍の伝説が生まれます。

 黒海とエーゲ海という、重要な海域をつなぐボスポラス海峡に臨むこの都市は古く
から交易都市として、そしてすなわち軍事拠点として栄えてきました。金角湾という
静かな入り江、天然の良港にも恵まれたこの都市は、壮麗かつ豪華絢爛な文化の中心、
ビザンチン文化を花開かせます。
 されど――栄枯盛衰は世の常、無常の理。ビザンチン帝国はゆっくりと衰退し、辺
境の民族たちに領土を脅され、そして内部からも崩壊してゆきます。
 そして15世紀、この都、コンスタンティノポリスの運命が大きく変わりました。
 東方の騎馬民族、それまではモンゴルに脅かされていたアイマール人たちが築いた
異教徒の帝国に、この都は完全に包囲されてしまいます。

 物語当時、1616年――この頃には世界最大の大帝国でもあったアイマール帝国
は、15世紀にローマ帝国の末裔であったビザンチン帝国を攻め滅ぼし、ビザンチン
最後の領土であった都を、それまではビザンチウムやコンスタンティノポリスと呼ば
れていた都市を占領し、そこを自分たちの首都とします。
 これが、帝都コンスタンティノヴァールのはじまりです。
(余談ですが…… コンスタンティノポリスをアイマール軍が占領したときには、
 この世界最大「だったはずの」都の、その城壁の内側はほとんど廃墟と化していて
 ほとんど住む人も居らず、アイマール人たちを驚かせました。
 この都とビザンチンを破壊したのは異教徒アイマールではなく、同じキリスト教徒
 であるはずの西欧人たち――13世紀初頭の第四次十字軍という名の破壊と暴虐が
 この都市とビザンツを破壊してしまい、後年の異教徒の侵略の原因となってしまい
 ます)

 15世紀、この街を占領したアイマール帝国の神皇帝、征服王と呼ばれた皇帝、
メフメト二世は、荒れ果てていた都市の再建にすぐさま着手します。ほとんど住人の
いなかったこの都市に、周辺地から様々の地域の住人、民族を強制的に移住させます。
そして様々の技術を持った人たちの入植を奨励し、さらには王宮をこの都に移して
首都とし、この都市に再び、繁栄と栄誉を取り戻させました。
 こうして――帝都コンスタンティノヴァールが、誕生しました。

 真教徒のアイマール人だけではなく、キリスト教徒やユダヤ人の入植をも許可し、
都市の再建をさせた征服王の時代から二百年近く――その影響で、帝都は類を見ない
ほどの国際的な都市として発展しました。
 帝都に住む人口は、物語当時、七十万人から八十万人、当時としては世界最大の都
市でした。その人口のうち、帝国人であるアイマールの人口は実は三十万人ほど――
それ以外は、アルメニア人やユダヤ人、西欧人などの、アイマールからすれば異教徒
たち、いわゆる異邦人がしめていました。
 アイマール人たちは、彼ら異教徒を迫害したり改宗を迫ったりするよりも、彼らの
経済活動が生み出す莫大な富と税金のほうが、はるかに自分たち帝国の利益になると
理解していた現実主義者でありました。
 この都市では、何人であろうと、どんな神を崇めていようと、規則を守り税を納め、
帝国の威光に従うのならば、誰にも迫害されず生きていける真の国際都市でありました。

 そして――
 1616年。「奴隷物語」の主人公、ジェナとその妹ドルカスは、ここ帝都で異邦
人として生まれ、そしてここ帝都で生き、暮らし――
 今回の物語が、ここ帝都で、始まります。

                                   つづく

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